2017/08/30(水)19:30〜

関根光才さん、TAKCOMさん、井口皓太さんが語る、映像作品へのこだわりーすごい勉強会「デザイン夜話。Vol.4」レポート

毎回テーマに沿った異なるゲストをお呼びし、「デザイン」を様々な切り口で考えるイベント「デザイン夜話-Design Yahour-」。好評につき、その第4回が8月30日(水)に開催されました!
今回のテーマは「映像とデザイン」。
イベントには、ゲストとして映像作家の関根光才様、映像ディレクターのTAKCOM様、CEKAI株式会社代表で映像デザイナーの井口皓太様をお招きし、ファシリテーターとしてリクルートコミュニケーションズコミュニケーションデザイン部次長の萩原幸也さんにお越しいただきました。

 

〈登壇者紹介〉
関根光才さん 映像作家

2005年、映像制作会社在籍中に、初監督作品となる短編映画「RIGHT PLACE」を発表し、カンヌの新人監督賞YDAのグランプリを獲得する。
2008年に独立後、数多くのCM・ミュージックビデオ・映画からアートインスタレーションに至る幅広い作品を監督し、国際的に認知される日本人監督となる。2014年にはカンヌ国際広告祭で日本人初となるチタニウム部門グランプリを受賞。
現在は国内・国外で映像監督としての活動を行う傍ら、プロダクションユニットNION(ナイオン)を立ち上げ、アートワークを制作。また3.11以降に発足した表現で社会に向き合うアートプロジェクトNOddIN(ノディン)でも創作活動を続けている。

 

TAKCOMさん 映像ディレクター

主にモーショングラフィックやVFXをバックボーンとし、 先端技術や時代性を持った事象に呼応した表現と同時に、 ハイテク、SF、未来的なモチーフを扱いながら活動をしてきた映像作家。

 

井口 皓太さん CEKAI株式会社 代表/映像デザイナー

1984年神奈川県生まれ。武蔵野美術大学基礎デザイン学科在学中に株式会社 TYMOTEを設立。 グラフィックデザインと映像デザインを軸にCM、MV、ライブ演出や、ブランディングなど、 さまざまなデザインワークを行っている。 2014年に世界株式会社を設立。会社や所属のフレームを超えたクリエイターや マネージャーが共存する場を創り、自社発信のデザインワークを行っている。 近作としては、HaKU「everything but the love」SOUR「Life is Music」などがある。 主な受賞歴は、東京TDC2014:TDC賞受賞。2015D&ADにおいてyellow pencilを受賞などがあげられる。

 

 

〈ファシリテーター〉
萩原 幸也さん 

株式会社リクルートコミュニケーションズ コミュニケーションデザイン部 次長

リクルートグループのコーポレートやサービスのブランディング、プロモーションを担当している。

 

 

前半はゲスト3名によるプレゼンテーションがあり、自己紹介を含め、お仕事や映像デザイン、制作について、制作秘話やこだわりを語っていただきました。

 

 

後半ではトークセッションが行われました。アイデアの発想法から今の仕事に至るルーツ、今後の活動まで、ゲストの皆様の映像への考え方や仕事観が垣間見える、そんなトークが繰り広げられました。

 

アイデアの発想法

萩原さん:まずはアイデアの発想法についてお聞きしたいと思います。
どういう発想が起点となって映像を作っているのか、コアアイデアやコンセプトをどのように立てていくのかを教えてください。

 

関根さん:他のお二人とは違う部分も大きいかと思うんですが、僕はストーリーに興味があるので、企画性やアイデア、どういう意味でそれをやっているのかと言う方に重きを置いているんです。僕の場合は、例えば車のCMで「車で野生のイメージを表現したい」という依頼が来た時に、そこから発想してストーリーを考えます。何を言いたいのかが全てなので、逆に言いたいことがないと困りますね。

 

TAKCOMさん:広告の場合は、クリエイティブディレクターがアイデアを持ってくることもあると思うのですが、そういう時はどうしているんですか?

 

関根さん:ケースバイケースです。演技の指示があればその通りに従う時もあるのですが、自分でアイデアの根本を考えてしまうことも多いので、そうした時には考えたことにテーマを合わせるように提案することもありますね。
最近は相当な自由度を与えてくれることも多くなってきたので、自分で考えて自分で落とし込むことは多いかもしれないですね。

TAKCOMさん:僕は、寝る、食べる、走る、といった原始的なところに身を置いた時にアイデアが浮かんでくることが多いですね。
自分の場合は、まだ自分が見たことのない一枚絵みたいなものが、作品の中で叶えられればいいなと思っています。

 

萩原さん:絵から発想していくのですか?

 

TAKCOMさん:そうですね、後から無理やりロジックっぽいものをつけたりしてます(笑)
口下手なので、絵から、言葉がなくても伝わるようにしたいというのはあります。

 

萩原さん:井口さんはかなりロジカルに組み立てているのだと思うのですが?

 

井口さん:言い訳っぽいところがあるんですよね(笑)
グラフィックの、数学的な比率とか重きに沿ってやると綺麗にできる、というところにハマってしまって、映像の中でもそういうところを見つけられたら気持ちいいなと思ってやろうとしています。
人間が普遍的に気持ちいいと思う映像やリズムはあると思うので、そこを意識して作っています。

TAKCOMさん:気持ち悪さのどこを修正すればいいかロジカルに解決できない時は、アニメーションの考え方というか、ディズニーの10個の基礎アニメーションの気持ち良さみたいなものからヒントをもらったり近づけたりすることもありますね。

 

クラフトへのこだわり

萩原さん:例えば着地点、つまりどこまで行けば完成と判断していいのかという基準はありますか?

 

井口さん:TAKCOMさんは人に頼むことが多いとのことでしたが、自分でCGを動かさないで任せるときにその辺の割り切りというのはありましたか?

 

TAKCOMさん:割り切りというか、一人で作っていると寂しいですよね。まあそれは冗談としても、ノイズがないと豊かにならないですよね。手癖みたいなものは直しますが、自分の癖に近づけたりはせずに、遊びを残すようにしています。カメラマンさんにあえて自由なワークを入れてもらうとか。

 

関根さん:僕は自分で手を動かしてCGを作らない人なので、どこで完成とするかという話はとても関心があります。
僕はどんなに合成しても全部を実写でやりたいタイプなんですよ。
でも、実写って自分の頭の中に描いている100%には近づかないから、必ず自分の期待値よりかなり低いんです。
実写が自分の想像を上回ることってなかなかないんですが、CGってどこまででもいけるじゃないですか。それこそ人に任せてしまうと、すごいジレンマとかあるだろうなって。

 

TAKCOMさん:難しいですね、ジレンマはありますね。CGを任せている人たちもある意味役者さんとかと一緒なのかなと思いますね。どんな人でも、編集マンでも、ちょっとずつ解釈してもらってやってるので、役者と同じ感覚かもしれないです。

 

井口さん:僕はこうやって撮りたいというこだわりが強くて、想像していたものが上がってこないかもしれないというのが嫌なんですけど、実写は100%で上がってこないと思っているということは、関根さんはそういうところも楽しんでいるんですか?

 

関根さん:僕はもともとすごく計算するタイプだったんですけど、途中からやめてしまいました。どんどんコンテとか書かなくなってみんなに嫌われちゃったんですけど(笑)
文章だけというのでも嫌がられたりするのですが、ハプニングだけで映像を作るみたいなことをしがちになってくるというか。多分それは自分が慣れすぎちゃったからかもしれないんですけど、そういう面倒くさいことになってきてますね。

 

井口さん:でもCGなら100%のものができるという話でもないですよね。
いつまでやっても自分でいいと思えるものまでいけないなんてこともありますよね。この感じは、意外と実写と同じかもしれないですね。

 

チーム・協業・共創について

萩原さん:CGを誰かに依頼するという話がありましたが、自分の作りたいものに対し、チームを作りで意識されていることや、実際の体験談があればお聞きしたいと思います。

 

井口さん:あの、僕も知らないんですけど、例えばTAKCOMさんならTAKCOMさんチームって決まっているんですか?仕事をするときに。

 

TAKCOMさん:ケースバイケースですね。今はチームも解散して、いろんな人と仕事をするようになっています。最近は特定の人に重点的に頼んで、しばらくその人とやってみようかと試みています。

 

井口さん:なるほど、僕はケースバイケースで仕事をするのが美しいとも思っていたし、デザインチームはずっと同じ仲間でやっていたので、実写撮影を毎回違う人たちと組んでするみたいなやり方はいいなって思っていたんですけど、やっぱり言語を毎回新しいところからスタートするとなかなか大変なんだなって思いましたね。
毎回作品のカラーが一緒になっちゃうのも違うけれど、絶対やりやすいチームはいるんだなとは思います。

 

 

関根さん:僕も、最初は色々な人たちと仕事していたのですが、だんだんと一緒に仕事をしやすい方は決まってくるというか、こういう系統の仕事の時はこの人に頼もうというのが決まってきますね。
海外のDP(Director of Photography:撮影監督)にはいつも同じ仲間で仕事をするという人がとても多いかもしれないですね。
ある時期から海外での仕事が増えて、コスト的にも、その国の新しい人たちとやってみたいと思っています。でも自分がいつもやってる人たちと仕事するんだ、という人が結構多い。
英語を話せるかという言語の壁と、日本との撮影手法の違いが一番ネックですね。

 

萩原さん:具体的にはどう違うんですか?

 

関根さん:長くなってしまいますが、ざっくりいうと一番違うのは、撮影監督(Director of Photography) という人が一番違くって、海外だとカメラマンが照明を持ってカメラワークを決めて、人によっては座っているんですよ。日本だとカメラを持っていて、照明技師という照明を持っている人が別にいるんです。

 

僕はどっちかというと海外のやり方の方がやりやすいと思っています。ブレーンが少ない方が、研ぎ澄まされたものができるのではないかと思っているからですね。
日本でもDPを入れてやろうとしていますが、照明業界から嫌われることもありますね(笑)

 

現在の仕事に至るきっかけ、影響など

萩原さん:今の仕事や作品に至るきっかけや、影響を与えた過去の体験はありますか?

 

井口さん:僕は小さい頃から高校までずっと野球をやっててキャッチャーだったのですが、その時に同時に色々な動きが起こっているのを判断したりとか、動きをシミュレーションするのが好きだったことが少なからず影響を与えているかもしれません。僕のカメラワークの中でも、人の癖によってどういう動きをするのかというように動きの分析をしていますからね。

 

TAKCOMさん:僕はステージや音楽にまつわる映像に影響を受けました。自分が学生だった頃に出始めた、ストーリーとは関係なく、リッチな映像そのものを魅せるというものに驚いたことがきっかけですね。

 

関根さん:僕は、小さい頃から自分の周りにアーティストが多かったのですが、彼らはお金借りてたり、どっかに蒸発してしまっていたり、とにかくがめちゃくちゃな人たちばかりでした。なんだろうこの非生産的な人たちはと思って、大っ嫌いだったんですよ。

 

だから、高校生の頃には普通のサラリーマンに憧れてたんですよね。
ですが留学中してた時に写真を撮って、フィルムを現像していた時に、撮ったものが紙に焼き付けられていく瞬間に、魔法みたいだと感動したことがきっかけでした。今となっては、美大行っておけばよかったなと思います(笑)

 

萩原さん:話は変わりますが、今の世の中を見ていると、映像の使われ方はすごく多様になってきています。一般の方々が撮影し制作した映像が、強力なコンテンツとして並べられているという状況も多く発生していると思うのですが、それらと皆様の作る作品は切り離して考えていますか?

 

関根さん:難しい問題ですね。僕らはそれで飯食っているから、気にはしているとは思うけど、気にしたところでどうすることも出来ないですね。
何を以って自分が作った映像だと言えるのかというかなり曖昧ですよ。
だから答えはないかもしれないんですが、一時期自分の中では、アイデアやストーリーがあるからやっているのかなって、個人的には思っていました。

 

TAKCOMさん:僕は結局好きだからやっているのです。必然性がないと、僕じゃなくてもいいかなってなってしまうので、そこはあまり気にしていないかもしれないですね。

 

井口さん:クラフトとか、自分で手を動かすとかいう部分を大事にしてますね。
フォーマット化しているものも増えて、それに倣うとそれなりに見えるし、それで満足してしまうというものが世の中に溢れてきているような気がします。だからこそ、自分が映像に取り組む姿勢を考えて行く必要があると思います。自分の中で哲学を持って作りたいと思っています。

 

萩原さん:ありがとうございます。皆さんの考えやこだわりに対する価値がまた高くなっていくと思いました。

 

今後目指していること

萩原さん:最後に今後の目標をお聞きしたいと思います。

 

関根さん:僕はもともと映画から入ったのですが、まだ作ったことのなかった長編映画に今ちょうど取り組んでいるところなので、まずはそれを完結させたいと思っています。
また、個人としての作り手を超えて、社会にいいインパクトを与えることをよりやっていけたらなって思います。

 

TAKCOMさん:僕も来年に向けて長編のストーリーを作り始めているので、それに取り組んでいきたいです。

 

 

井口さん:僕もストーリーがあるものをやってみたいんですよね。デザインの考え方としての映像も色々ある中でも、時間を持っている映像を撮る以上、ストーリーに挑みたいと思っています。
ただそれは今やっていることの延長線になってると思うので、自分が今やってることを納得できるものにできたらなって思っています。
長く続けていきたいので、焦らずにやっていきたいです。

映像という手法にこだわりを持つ3名の考え方や生き方が垣間見えるトークセッションでした。
自分の好きなことや仕事に対するこだわりは、デザインに携わる多くの方に響いたのではないでしょうか?
次回、『デザイン夜話。』は第5回で1つの区切りを迎えます。次回もお楽しみに。

カメラマン:石亀広大