2017/06/26(月)19:30〜

筒井美希さん、カイシトモヤさん、加藤晃央さんが語る、デザインの価値とは?ーすごい勉強会「デザイン夜話。Vol.2」レポート

本記事は、6月26日に開催された「デザイン夜話vol.2-Design Yahour-」のイベントレポートです。

 

〈デザイン夜話とは?〉
本イベントは、『「デザイン」という言葉を広く捉え、ゆるく話し、がっちり繋いでいく』をコンセプトに、毎回多彩なゲストをお迎えしテーマに沿って「デザイン」を考えるイベントです。
2回目の開催となる今回のテーマは「デザインを身近にする」
デザインのメソッドや価値を、わかりやすく、楽しく世の中に伝える活動をされている著名な方々をお呼びし、その活動やデザインに対する考えや想いを語っていただきました。

 

〈登壇者紹介〉
前半では、登壇者それぞれの自己紹介や携わっている事業の紹介が行われました。

 

株式会社コンセント アートディレクター 筒井美希さん

武蔵野美術大学デザイン情報学科卒業後、大学在学中から専攻していたエディトリアルを中心に、グラフィック、ウェブ、映像など、幅広いジャンルの「伝わるデザイン」を手がけるアートディレクター。著書に『なるほどデザイン 目で見て楽しむデザインの新しい本。』(MdN)がある。近年の実績としては、経済産業省広報誌『METI Journal』、立教大学『大学案内』、カネボウ化粧品CRMアプリ『スマイルコネクト』などがあり、講演・ワークショップも数多く手がけている。

 

株式会社ルームコンポジット 代表取締役/ アートディレクター
東京造形大学 准教授 カイシトモヤさん

関西大学 社会学部産業心理学専攻卒業。2007年、株式会社ルームコンポジットを設立、代表取締役。音楽、アニメーション、現代美術、印刷会社などに関わるグラフィックデザインを手がける一方で、「デザインプロセスのコミュニケーション」も研究対象としている。香港国際ポスタートリエンナーレ 金、銀、銅賞およびKAN Tai-Keung賞、APA 金丸重嶺賞、繊研流通広告賞 金賞など数多くの賞を獲得。著書に「How to Design いちばん面白い
デザインの教科書」「たのしごとデザイン論」「デザインのプロセス」(MdN)などがある。

 

株式会社モーフィング 代表取締役
世界株式会社 共同代表 加藤晃央さん

武蔵野美術大学在学中に起業し、株式会社モーフィングを設立。美大生のフリーマガジン「PARTNER」発行、美大総合展覧会「THE SIX」企画運営、美大生に特化した就職メディア「美ナビ」の運営、森ビル株式会社と共同で就職展覧会「美ナビ展」開催など、若手クリエイターと社会をつなぐ活動を幅広く行う。2013年には同世代のフリーランス化や独立起業の流れを感じ、個が集結できる場所としてクリエイティブアソシエーション CEKAIを設立。2017年、今までの活動の集大成となるクリエイティブプラットフォームBAUSを立ち上げ。クリエイティブチームTYMOTEにもメンバーとして在籍し、自身も多様な働き方を摸索し、在籍する組織間を横断中。

 

〈ファシリテーター〉
株式会社リクルートコミュニケーションズ コミュニケーションデザイン部 次長
萩原幸也さん

リクルートグループ全体のコーポレートやサービスのブランディング、プロモーションを担当している。CMやロゴ、チラシなど多岐にわたり、リクルートの想いをカタチにし広めている。

 

 

〈トークセッション〉
イベント後半では、お題を設け登壇者全員によるトークセッションが行われました。

 

「デザイン」を広めるということとは?

カイシさん:僕は、「デザイン」とは“関係性を構築すること”だと思います。“何かをつくる”という職能的な「デザイン」だけでなく、“経済や心理学を学んだ”っていうのと同じぐらい一般的な抽象化された概念として広まればいいなと思っています。みんながみんな、“広告作る人になるぞ!”とか“有名デザイナーになるぞ!”と言っている時代ではないかなあと思っていますね。

 

筒井さん:「デザインを広めたい!」という強い意思があったわけではないのですが、カイシさんもおっしゃる通り、デザインはただつくるだけでなく、それによって”関係性が生まれる”ことに価値があるなと思います。もっとデザイナー以外の人にも役に立てられる行為だし、心から楽しいと思っていたので、それを形にして届けてみたいなという気持ちはありました。

 

カイシさん:筒井さんの著書の「なるほどデザイン」のお話でもありますが、デザイナー以外の方が「デザイナーってこんなこと考えてモノをつくっているんだ!」ってことが伝わるといいですね。

 

筒井さん:そうそう、色や書体も好みで決めているんじゃなくて、ひとつひとつに理由があるということとか。お客さんに丁寧に説明をすると、「なるほど!」と言ってもらえることが多かったんです。デザインを考えることの面白さが伝わったらいいなと思って、著書の『なるほどデザイン』を作りました。

 

デザイナーとは?

カイシさん:デザイナーとは、ただコンテンツをつくる人のことではなく、お客さんとの物語、いわゆるコンテクストをつくっていると思っています。

 

例えば、たくさんのロゴ案がある中で、お客さんが案を見てその中から1つのロゴを“選んだ”というストーリーにお客さんは誇りを感じたりするわけで。そのストーリーをつくっているのが我々デザイナーなのではと思いますね。僕は、心理学を学んでいたこともあって仕事の上でも、お客さんと一緒につくった感じをわざと演出したりするときも正直ありますね(笑)

 

加藤さん:僕は、抽象的なものを具現化できるデザイナーという存在をもっと世の中に認知させたいと思ったのがキッカケで今のクリエイティブプラットフォームをつくる仕事をしています。「デザイン」という制作物を世の中に溢れさせたいというよりは「デザイナー」という“人”の関係性を広めていきたいと思っています。

 

コミュニケーションをデザインするとは?

カイシさん:様々な活動をされている先生がたくさんいらっしゃるので、一概には言えないのですが、美術大学で“コミュニケーションデザイン”を教えていると、コンテクストの部分がどうしても弱いなと感じます。

 

というのも、社会に出ればお客さんや仲間とのコミュニケーションをとらなければデザインなんて出来上がらないのに、美大では課題の意味の模索から制作、講評まで全部1人で進めるケースが多いんです。だから、美術大学でやってきた(1人で進めるという)進め方を社会に出てからもしてしまうがために、美術大学でトップでやってきた人でも挫折してしまう人
が多いですね。

 

筒井さん:相手のやりたいことや感じていることについての理解力と共感力が大切ですよね。そのうえでどういう提案をするか、というところに面白みを感じます。ただ一方で、そのやり方に慣れすぎると透明な存在になってしまいそうというか……。デザイナーとしてのエゴがなさすぎてしまうとそれはそれで問題だと思うので、試行錯誤しています。

 

デザインのこれからについて

筒井さん:デザインをシンプルに捉えると、ある程度言葉で説明ができるようになります。ただ、「説明ができるデザイン」はプロセス化しやすい。つまりこれからの時代はAIに簡単に代替されてしまうのでは、とも思うのです。

 

ロジックありきのデザインではなく、不合理なところや非効率なところも含めた、理屈ではないデザインにこそ、今後は価値が残るのかなと漠然と考えています。

 

カイシさん:僕も筒井さんとすごく考えていることが似ていて、デザイナーというクリエイティブな仕事は、1番AIなどの代替されるものから遠いと思われがちですが、意外に近いんですよね。だから、結構怖いなと感じたりしますね(笑)だからこそ、僕たち人間にしかできないものは何なのかを考えないといけないですね。

 

デザインを通じて今後やりたいことは?

加藤さん:僕は、本を出したいなと思っていますね。僕みたいな(デザイナーとの)繋ぎ役ってあまりいないと思っているので、そういう僕以上に繋ぎ役の才能を持った方と一緒にプラットフォームをつくっていきたいなと考えています。

 

筒井さん:絶賛模索中です(笑)。『なるほどデザイン』を出して以降、“デザインの説明”を求められることがとても増えたんですね。新しい出会いがたくさんあって刺激的だった一方で、今はその反動で “デザインの説明”をあまりしたくない、言葉に頼らないものづくりをしたいといった、天邪鬼な気持ちもあって(笑)。

 

一方で、手を動かすことが得意なデザイナーの強みを活かしながら、全体をディレクションする役を担うことはとても楽しい。デザインに関係するありとあらゆることに好奇心を持っていたい性分なので、それを活かしてビジネスとデザインのよいつなぎ役になれればと思っています。

 

カイシさん:僕は、自分がデザイナーであるという限定的な考え方を駆逐したいですね(笑)クライアント側もデザイナー側も「デザイン」ということを理解して、“この「デザイン」っていう能力ってどの仕事にも必要じゃん!”ということに気付いてほしいですね。
「デザイン」とは、“関係性を考えて、以前より関係をより良くしていくもの”に変わりはないわけです。モノをつくる仕事じゃなくても人事であれ総務であれ何にでも使えるから「デザイン」を勉強してみよう、デザイナーって特別な存在ではないんだ、ということをみんなに知ってもらえたら嬉しいですね。

 

最後に、質疑応答も行われました。

デザインを始めたキッカケは?

カイシさん:僕は、信藤三雄さんというCDジャケットをつくられているアートディレクターの方に憧れてデザインを始めました。最初は、デザインの道に進むかかなり悩んだのですが、その日たまたまTVで見た『耳をすませば』で誠司くんがバイオリニストになると言った台詞にガツンと背中を押されて、デザインの道に進むことになりました(笑)

 

加藤さん:僕は、ベンチャーキャピタルというデザイナーもいなければ、美術大学出身者
も全くいない環境にいた時に、知り合いのデザイナーだったりの紹介を始めたのが今の仕事のキッカケでした。ベンチャーキャピタルというスタートアップに投資をしていく立場にいて、上を目指して頑張っている人達とデザイナーをもっと繋いでいきたいと思ったのがキッカケですね。

 

筒井さん:図書館司書になろうと思っていたぐらい本が好きで、書籍装丁を仕事にしたいと思ったことがキッカケです。また、高校生の時にウェブサイトを自分で作ってみて、デジタルにも興味を持ち始めました。

 

ただ、美大は絵を描くところだと思っていたので、まずは専門学校に相談しに行ったら「今から気になっているなら、専門じゃなくて美大にいったら?」という助言をもらって美大に進み、現在に至るといった感じですね。

 

 

〈まとめ〉
「デザインを身近にする」をテーマに行われた、今回のデザイン夜話vol.2-Design Yahour-。
「デザイン」とは“関係性を構築すること”。この考え方に初めて出会った方もいたのではないでしょうか。

 

「デザイン」というと、どうしてもクリエイティブで難しいことを想像してしまいがちですが、“関係性を考えて、以前より関係をより良くしていく“ことはどんな環境でもいかせる身近なスキルであることを学ぶことができました。

 

デザイン夜話-Design Yahour-は、毎回異なるテーマで、それに関わる旬なゲストをお招きし、シリーズで開催しているイベントです。

 

3回目は「企業とデザイン」をテーマに開催致しました。
企業全体のデザイン統括やブランディングに関わる方々に登壇していただき、企業におけるデザインの意義やデザイン組織のマネジメント、社内外との関係などを様々な切り口からお話しいただきました。
次回の記事もお楽しみに!