2017/07/12(水)19:30〜

佐藤洋介さん、赤坂幸雄さん、工藤晶さんが語る、企業におけるデザインの重要性とは?ーすごい勉強会「デザイン夜話。Vol.3」レポート

本記事は、7月12日に開催された「デザイン夜話。vol.3-Design Yahour-」のイベントレポートです。

 

デザイン夜話とは?

本イベントは、『「デザイン」という言葉を広く捉え、ゆるく話し、がっちり繋いでいく』をコンセプトに、毎回多彩なゲストをお迎えしテーマに沿って「デザイン」を考えるイベントです。

3回目の開催となる今回のテーマは「企業とデザイン」。

企業全体のデザイン統括やブランディングに関わる方々に登壇していただき、企業におけるデザインの意義やデザイン組織のマネジメント、社内外との関係などを様々な切り口からお話しいだたきました。

 

 

〈登壇者紹介〉

前半では登壇者それぞれの自己紹介や携わっている事業の紹介が行われました。

 

佐藤洋介さん 株式会社サイバーエージェント クリエイティブ執行役員 

新卒で入社した大日本印刷株式会社を経て、2012年に株式会社サイバーエージェントに入社。インターネットテレビ局「Abema TV」や、音楽ストリーミングサービス「AWA」など、主にユーザー向けのメディアサービスのデザイナーを統括し、クリエイティブ責任者として各サービスのUIデザインを監修している。また、企業ブランディングや広告、宣伝、クリエイターのマネジメントなど幅広く携わっている。

 

 

赤坂幸雄さん 株式会社DMM.comラボ デザイン本部 本部長/取締役 

2000年に株式会社DMM.com入社。入社当初から「デザイナー」という枠を超え、部署の立ち上げから事業サービスの設計、制作、運用、改善に携わる。現在は、デザイン本部のマネジメントを通してDMM全体のサービス監修やデザイン、そして会社全てのデザイナーの価値を高めることを目標にしてクリエイティブ向上を目指している。

 

 

工藤晶さん IBM インタラクティブ・エクスペリエンス事業部 事業部長

コンサルタントとして、20年以上、国内外の企業を支援。日本におけるIBMインタラクティブ・エクスペリエンス事業を立ち上げた。戦略コンサルタント・デザイナー・エンジニア・データサイエンティストといった多彩なタレントからなるチームを率いて、社内だけでなく、社外のお客様にむけてデジタル・リインベンションを戦略から定着化まで支援している。著書に「IBMの思考とデザイン」がある。

 

 

〈ファシリテーター〉

萩原幸也さん 株式会社リクルートコミュニケーションズ コミュニケーションデザイン部 次長

リクルートグループ全体のコーポレートやサービスのブランディング、プロモーションを担当している。コンセプトワークや、CMやロゴの制作など多岐にわたり、リクルートの想いをカタチにし広めている。

 

 

〈トークセッション〉

イベント後半では、お題を設け登壇者全員によるトークセッションが行われました。

企業の中で「デザインする」とは?

萩原さん:企業・組織に対して、デザインの役割や重要性をどのように伝え、推進していったのかを具体的に教えていただきたいです。まず、工藤さんにお聞きしたいと思います。

 

工藤さんCEOのジニー・ロメッティが「デザインに投資をする」と決めたとき、デザインの詳細まで理解していたわけではありませんでした。IBMの中でフィル・ギルバート氏がやっていたビジネスが倍以上の売り上げを伸ばしていて、CEOがフィル・ギルバート氏に「あなたが事業を成長させたやり方(デザイン)をIBM全体に広めてくれ」と言ったのが始まりでした。そのやり方の中の1つがデザイン思考であり、アジャイルの開発であり、デザインリサーチの手法でした。ビジネスがどうやったら成長できるか、そのために何が必要か、それがデザインの手法だったというところから、スタートしていますね。 

 

萩原さん:先にそうした成功事例があった、ということですね。他のお2人は、どのようにデザイン組織の立ち上げていったのですか?

 

赤坂さん:これに関しては、会社の経営に対して、デザイナーであろうとなかろうと社内の人間同士で「共通言語」をもって話さなければならないと思っています。具体的にDMM.comでは、経営側の人間が考えた事業をユーザーにちゃんと届けるということを行っています。事業の立案者には課題があってそれを解決するための1つの答えが事業であったりもするので、いかにそれを立案者の想像通りにユーザーに届けたり、課題を解決できるのかといったところをデザインや設計で作り続けるということをやっています。

 

佐藤さん:僕の場合は、経営側や会社からのオーダーに対して一生懸命応えるといった感じですね。昨年、企業のロゴを変えた時もそうでしたね。

 

萩原さん:ロゴを変えた時、社外のデザイナーさんと一緒にやられたとおっしゃっていましたが、社内にもデザイナーがいる場合は、社外のデザイナーさんと会社をつなぐような役割になるんでしょうか?

 

佐藤さん:そうですね。ハブにはなりますね。ただ依頼するだけではなく、経営者の想いを漏らさず言語化して伝えたり、会社としてどういうブランディングをしていきたいかなどはこちら側でもしっかりと考える必要があります。今回のロゴの場合は「会社としてこんな風にみられたい」という目指すべき姿勢や目線を伝えました。

 

デザイン組織におけるマネジメントの方法とは?

萩原さん:今日ご登壇いただいているみなさんは、マネジメントをする立場にいらっしゃると思うのですが、評価制度も含めてデザイン組織におけるマネジメントの方法を教えてください。

 

佐藤さん:サイバーエージェントの場合は、マネジメントだけをしているデザインの管理職はいません。僕自身、「自分はマネージャーである」といった自覚はないです。というのも、「デザイナーはデザイナーにしか従わない」と思っていて、上で見ている者の手が止まったら信頼関係がそこで終わってしまうので、自分もデザイナーとして手を動かしつつ、マネジメントをするということを心掛けています。弊社の場合は、役職がついている人のほとんどが手を動かしていますね。

 

赤坂さん:DMM.comの場合は、会社全体としてプロダクトをつくるデザイナーが1番偉いと思っています。これは、ちゃんと成果物をアウトプットできる人が偉いという意味です。こういったが人がより働きやすくなるための調整をするのがマネージャーという認識です。

 

「役職がついているから偉い」ではなく、1年目の人でもきちんとアウトプットしている人が1番偉いです。

 

僕はマネージャーとして、彼らをどう生かすのか、より高いパフォーマンスを発揮できるのかを模索して道をつくるということを行っています。

 

工藤さん:僕も、佐藤さんのお話に共感しています。僕はコンサルタントなのですが、「コンサルタントもコンサルタントにしか従わない」のです。

 

そう考えると、コンサルタントである僕のところにいるデザイナーをどう動かしていくか

という問題が生じます。その解決方法としては、“デザイナーにデザイナーをマネジメント”してもらうということになります。デザイナー同士で評価を行うといった仕組みを作っています。 

 

また最近、デザイナーを社内に増やす企業が増えていますが、今までは“キャリアパス”の制度が整っていないことも多いようです。IBMも当初は制度がなかったのですが、去年から正式にデザイナーとデータサイエンティストというプロフェッション(職種)を全世界で公式のものとしました。その2つの職種は、技術職として最終的にはフェローまでいける可能性があるというしっかりしたキャリアの制度となります。 

 

やはり、企業としては「あるスキルを伸ばしたい!」といった専門家に対して、キャリア制度をきちんと整備するということが重要だと思います。 

 

佐藤さん:確かに。管理職だけでなく専門職も輝ける職場がいいですよね。その位置づけとして、弊社にはグレード制があって、専門職のグレードはレベル1~7まであります。ただ、“何が出来たらグレードが上がる”ということは最低限しか明確にしないです。

 

赤坂さん:逆に伝えた方が、やる気が起こると思うのですがなぜ明確にしないのですか?

 

佐藤さん:確かに、伝えた方が行動すべきことが明確になって目標設定をしやすくなるとは思います。ただ、明確に伝えてしまうとグレードを上げることだけを目指すようになってしまうのです。“一人ひとりがどのように成長するのか”というバッファーを見たいので、あえて曖昧にしています。

 

赤坂さん:なるほど。弊社にもスキルでグレードが決まる制度があります。レベル3まで進んだらマネージャーかスペシャリストに分かれる仕組みです。スペシャリストの方が、給与の上限がないという設定になっています。もちろん、スキル評価だけでなく、職能評価、事業貢献評価という3本の軸でそれぞれをみています。

 

デザイナーで役員って何をしているの?

萩原さん:佐藤さんと赤坂さんは、役職に就かれていますが、具体的に何をされているのですか?

 

赤坂さん:僕は30歳の時に役員になったので、もうすぐ7年目になります。しかし、会社側からも「役員になったんだからコレをやってほしい」といったようなオーダーはなく、「役員という権限を与えるからなにかをしてみろ」といった感じでした(笑)

 

そこから、役員になって「世の中の役員って何をやっているのだろう?」と思い、調べはじめ労務や数字周りのことを勉強し始めました。

 

ただ、“役員になったから発言力が大きくなったのか”というと決してそんなことはありません。今まで積み上げてきたものが実績ですし、社内では今後もその実績を上げ続けていくことがこれからの仕事でもありますね。

 

一方で、社外では“取締役”という肩書になってから、相手方との交渉がスムーズになりました。やはり、“部長”という肩書だと決裁権がなかったので、“取締役”になってから物事を進められるようになりました。

 

佐藤さん:なるほど。僕は“執行役員”なので、赤坂さんよりも一社員としてほぼ変わらないですね。ただ、“執行役員”という役職名から、“自分は、社員すなわちクリエイターの代表である”といった自覚を持って行動しています。

 

今後の取り組みとして考えていること

萩原さん:最後に、今後デザインを通じて成し遂げたいことはなんですか?

 

佐藤さん:僕は今まで通り、目の前にあるものを全力で取り組んでいくと思います。ただ、サイバーエージェントにしかできない常に新しいものをつくっていきたいと思っています。何よりも、社内で一緒に働くデザイナーがサイバーエージェントで働くデザイナーであることに誇りを持ってほしいと思っています。

 

赤坂さん:社外から「DMM.com=超カッコイイ」と思われるようにしていきたいです。そのために、社内のデザイナーには“DMM.comのクリエイターであるからこそ低レベルなものをつくってはダメなんだ”という自覚をもってもらいたいです。さらに、最近は今まであきらめてきたブランディングを社内外に行おうとしています。外注しているCM製作にも、社内のデザイナーが関わっていくことによって社内からの信頼が厚いデザイナーを育てていこうと思っています。

 

工藤さん個人的には、IBMの全社員40万人にデザイン思考を浸透させたときに何がおきるのかを見てみたいなと思います。また、今後はデザイナーがデザインすることに加えて、デザインの思考を、社内外にコンサルティングするということを目指しています。デザインとビジネスとテクノロジーが融合することにより、より面白いものができるのではないかと思っています。 

 

萩原さん:ありがとうございました。

 

〈まとめ〉

「デザインと企業」をテーマに行われた、デザイン夜話vol.3-Design Yahour-。トークセッション後に開催された懇親会も大いに盛り上がりました。デザインは、単にプロダクトを設計するだけではなく、マネジメントやコンサルティングで人間同士をも動かし、組織全体も円滑にすることができる。皆さんも、これを機に「デザイン」について広く考えてみませんか?

次回の『デザイン夜話。』は「映像とデザイン」をテーマに開催予定です。どうぞお楽しみに!