2017/03/30(木)19:30〜

インバウンドマーケティング勉強会――旅ナカ編! データで見えてくる“爆買い終了”報道の真実とは?

 

訪日外国人旅行客をターゲットに据えた“インバウンドマーケティング”。

名前こそ知られてきていますが、まだまだ「何をやればいいの?」、「どこまでのことができるの?」と疑問点が多い領域でもあります。 

 

そこで、株式会社ナイトレイさまの特別協力をいただいて、“インバウンドマーケティング勉強会”を開催。

カスタマージャーニーを旅マエ、旅ナカ、旅アトの3つのフェーズに分けて、インバウンドマーケティングに携わるかたがたの成功事例や失敗事例をご共有いただいています。 

 

3月30日に開かれた3回目となる勉強会は、いよいよ「旅ナカ編」に突入です。

ご登壇いただくのは、1回目から特別協力いただいている株式会社ナイトレイの石川豊さんに加え、株式会社Paykeの古田奎輔さん、株式会社Bridgeの松本雄介さんのお三方。 

 

モデレーターは、リクルートコミュニケーションズでインバウンドマーケティング部門の新規事業開発責任者 大坪清吾さんです。 

 

 

大坪さんが所属しているのは、リクルートの各領域を横断して新規事業の開発にあたる部署。

インバウンドマーケティング勉強会は部活動形式のコミュニティであり、共通の関心・興味を持つ者同士が一堂に会する場となっていることを説明。

「このあと行われる懇親会を異業種交流会として役立ててほしい」と述べてから、登壇者を紹介しました。 

 

まずは株式会社ナイトレイの石川豊さんです。 

石川さんが代表取締役を務めるナイトレイは、位置・移動情報に特化したSNS上の投稿内容を分析するinbound insight(インバウンドインサイト)」を中心に、訪日外国人観光客の位置に関する分析サービスを提供しています。 

 

石川さんがこの事業をはじめたのは「インターネットとデータと地図がめちゃくちゃ好きだったから。ならば、自分にしかできず、まだ誰もチャレンジしていない領域として、ロケーション×データという切り口で何かできないか」と考えたからだそうです。 

 

そしてその「何か」も「たとえばちょっと旅行に出たりしたときに便利さを感じてもらったり、企業にとってはマーケティングを少し楽にしたりなど、みんなの生活がちょっとでも豊かになるようなもの」を目指したということです。 

 

ここで出てくる“ロケーションデータ”とは

「地図上に表現できるデータのこと。
ある箇所に人がたくさん来ている。しかも、国別ではこういう割合で、ここで買われているものはこういうもので……、というような情報」

と、石川さん。「はじめたばかりの頃はSNS上の情報だけの解析でしたが、それだけでは足りない部分もあるため、現在では通信キャリアや行政と連携してデータをご提供いただき、よりビッグで詳細なデータを解析できるようになってきています」。 

 

石川さんによれば、「リアルタイム解析やビッグデータ解析により、見えてくるものも多くなった」とのこと。

これらの情報を、インバウンドマーケティングに力を入れたい、訪日外国人向けサービスを展開していきたいという企業にWebサービスとして提供。月額数万円から10万円という有料版だけでなく、無料版も用意しています。 

 

リリースから約1年半(2015年7月リリース)で4500社以上が登録しているという、ナイトレイのinbound insight(インバウンドインサイト)。ソリューション提供企業や、訪日外国人と直接対面することの多いビジネスを営んでいる企業がユーザーになっているそうです。 

 

提供しているデータは外国人旅行客の動向ですが、「日本人向けのマーケティングと、プロセスに変わりはないはず」と石川さん。
「仮説を立てて、裏付けを取って、社内外の意思決定につなげて実行し、結果を見て効果検証する。普通にPDCAを回していく必要があるんですよね。でも情報が足りない。漠然とした数字しかない。そこをなんとかして旅行客にぐっと刺さるようなマーケティング施策をするのに、ナイトレイが必要なデータをわかりやすい形で提供している、という感じです」。 

 

2月27日には1.3億円の資金調達も実施( http://nightley.jp/archives/7705 )。インバウンドマーケティング領域が、現在注目を集めており、伸びのある事業であることがうかがい知れます。 

 

石川さんは、B to C領域のアプリ「ZouZou( http://zouzou.nightley.jp/ )」についても言及。「旅マエのところから旅ナカまでをカバーできるアプリで、これによりディープなスポットを簡単に見つけられるなど、日本をもっと楽しく旅行していただくことができます。今後、プロモーションなどにも力を入れて、多くの人に使ってもらえるようになればと思っています」と抱負を述べて降壇されました。 

 

続けて登壇されたのは、株式会社Payke 代表取締役 CEOの古田奎輔さん 

 

Paykeは、スマートフォンで商品バーコード(JAN)を読み込んだら、製品についての画像や説明、使い方や食材であればレシピなど、消費者が見たいと思う情報、利用者の母国語で表示するサービスを提供しています。 

 

そんなサービスを提供したいと考えたきっかけとして、「日本では、作り手と消費者の距離が非常に遠く、そのせいか海外から『作るのはうまいのに売るのが下手』という評価を得てしまっている」と現状の課題を挙げます。 

 

たとえば、わたしたちが外国に行った際、中身の判別がつかないような製品を商品棚に見つけた場合、購入しようか悩んでしまいます。

「果物のイラストが描いてあって、中身が液体だから、何かの飲料かな? と買って、開けてみたら洗剤だったとか」と古田さん。「逆に、洗剤だとわかったとしても、よくわからなければ買うことはありません。でも、実は海外の現地では大人気の製品で、セレブたちも愛用している、などの情報があったら「じゃあお土産として買ってみよう」となる。

こういう具合に、伝わらないことによる潜在的な販売機会の損失はあちこちで見られるのです。 

 

Paykeが最近力を入れているのは「小売店向けサービス」だといいます。ユーザーが自分のスマートフォンを使うのではなく、店内の棚に商品読み取り機能付きのPayke端末を備え付けておき、Payke端末に商品をかざすだけでその商品の説明をユーザーの言語で表示できます。 

 

古田さんによれば、「POSレジデータを分析したところ、導入したお店の売上は上がっている」とのこと。Paykeアプリのローンチから1年3カ月ほど(ローンチは2015年9月)ですが、400社ほどが導入しており、まだまだ拡大し続けているようです。 

 

ちなみに、製品データはメーカーからPaykeのWEBサービスを通して直接入力してもらったり、Paykeが収集したりしたもので、多言語対応という点においては「国内最大級。どの企業より、商品情報の多言語データを持っています」と古田さん。「先ほどの小売店の端末や、ソフトバンクさんが提供するpepperというロボットにPaykeの商品情報データベースが組み込まれていたりします。また、多言語サイト向けAPI、ウィチャットで使用できるSDK(ソフトウェア開発キット)なども提供しています」。 

 

Paykeのアプリユーザーの95%が海外のユーザーだといいます。古田さんは、「台湾、香港、マカオではAppStoreの無料総合ダウンロードランキング1位を獲得しましたし、『るるぶ』の海外版のような雑誌に日本で使える『4大翻訳アプリはこれだ』というような特集で取り上げられることもありました。( http://payke.co.jp/news/news/hongkong_weekend.html%EF%BC%9D )Google Translatorと並んで紹介されていたのが、変な感じでした(笑)」と振り返りました。 

 

Paykeアプリの強みは「すべて自社のプラットフォーム上でサービスを動かしていること」だと古田さんは言います。 

「これは、どんな情報でも取れるということを意味します。そのため、誰がどこでなにを見ているのか、なにに興味があるのかがリアルタイムでもわかりますし、その蓄積したデータを元に分析して提供することもできます。 

 

特に活用していただきたいのは地方自治体ですね」と古田さんは力を込めて語ります。

「地方に行けば行くほど、特産品など「説明がないと良さや魅力が伝わらない商品」が多く外国人から自分たちの物産品がどのように見られているのかわからない、と感じているようです。うちのサービスを使えば、商品の魅力を多言語で伝えることもできますし、活用データもご提供できます。ナイトレイさんとの提携も試験的に行なっていますので、興味のある人はぜひ(ナイトレイの)石川さんにおたずねください(笑)」と述べて、モデレーターにバトンタッチしました。 

 

最後は株式会社Bridge代表取締役の松本雄介さんです。 

 

 

Bridgeの創業は2016年1月。「Trip Free」サービスは2016年10月に提供を開始しました。 

 

Trip Freeとはどのようなサービスでしょうか。松本さんは「訪日外国人にとって、日本でもっとも困るの無料公衆無線LAN少ないこと、またSIMの入手と利用が難しいこと、と観光庁のデータが示しています」と説明します。 

 

「そこで、訪日外国人旅行者に無料で使えるSIMカードを貸し出し、通信費を無料化。その使わずに済んだお金を日本でのアクティビティに使ってもらえるようにしたのが、このTrip Freeです」(松本さん) 

 

「無料通信分のデータ量は500MB。ユーザーの平均滞在日数は7日間〜8日間のため少し足りないと思われる量です。と松本さん。「その少し足りないデータ量を補うために、Trip Freeサービス経由でレストランやアクティビティの予約をしていただくと、1回ごとに100MBの容量を増やる機能があります。」と解説しました。 

 

この、「予約」について松本さんは「店舗施設でコミュニケーションができないということも、訪日外国人にとっての困りごとのひとつ。自国の言語で予約や決済ができる仕組みを取り入れることで、その課題を解決しています。しかも使える通信データ量も増えます」と語りました。 

 

利用手順は非常に簡単。まず訪日前にWeb上で会員登録し、その際レンタルするSIMカードのデポジット登録とクレジットカード認証も行なっておきます。日本に到着したら、空港でSIMカードを受け取り利用開始。帰国時には空港に備え付けのポストで返却して利用終了です。 

 

「空港のチェックインカウンターの近くにもポストがあるため、ユーザーのほとんどがそこで返却されています」と松本さん。受け取りはパスポートを見せるだけ、返却はポストに入れるだけ、と最初から最後までスマートに利用できそうです。 

 

基本的に、訪日前に登録という形を取っていますが、「まだサービスを開始したばかりなので、ユースホステルでの配布もしている」といいます。また、「集客したい企業に対しても無料SIMカードを提供し、企業から『オプション提供』という形でユーザーに配布していただいています」と企業アライアンスという形を取っていることも説明しました。 

 

試験的に「無料SIMカードを先着でプレゼント」というキャンペーンを実施したところ、「台湾や香港からの申し込みが、1カ月ほどで約1万3000もの数に上った。このことから、アライアンス先を増やしていく見込みがついたこと、また訪日ブロガーさんたちのメディア露出を積極的に行っていき、ブログを見て使いたいと感じていただけるようにしたいと考えています」と、松本さんは今後の見込みを語りました。 

 

企業との提携については、「本来、SIMカードというものは2000円から3000円するものですが、弊社ではデポジットを取ったレンタルモデルのため1000枚とか5000枚という単位で配布可能になっています」と松本さん。

「また、デポジットを取ることやあとで返却しなければならないことからユーザーに遠ざけられるのでは?といった懸念もありそうですが、本来有償のSIMカードが無料で、しかも500MBのデータ通信もでき、さらに自国語で飲食店の予約もできる、ちゃんと返せばいいだけ、という認識で、メリットのほうを見ていただいているようです」と分析していました。 

 

現在のTrip Freeの強み
1. 旅マエの獲得ができる
2. デポジット登録で認証済みのクレジットカード情報を取得できている
3. いつ来ていつ帰ったか、どこを訪れたかといった旅行者の情報が取れる
4. SIMの再利用が可能
ということ。 

 

今後は、「要望の多い『有料でもいいので日本文化について学ぶ機会が欲しい』、『地域のおすすめ情報を提供してほしい』という声に応えたり、無料SIMカード提供にとどまらず来日後の二次交通費(日本国内の移動にかかる交通費)の無料化など、手軽に日本に来てもらい旅行を楽しめるようなサービスに成長させていきたい」と抱負を語りました。 

 

ここからはトークセッションです。 

実はまだ終わっていなかったモノの消費“爆買い”

大坪さん:
インバウンドの領域で、最近は“モノからコトへ”が叫ばれています。コトの消費という面でどの地域が盛り上がっているかお答えいただけますか。 

 

石川さん:
季節的なものもあると思いますが、近ごろだと、桜の見頃を迎える地域が盛り上がっていますね。わざわざ桜に合わせて大阪城や上野などを訪れる。そのほか、中国人にとって直近1カ月で人気があったのは解体中のお台場ガンダムでしょうか。 

 

爆買いに関しては写真アップが少なくなっているかというとそういうこともないし、データでもそういうのは見られないので、ニュースで言うほど終わっているわけではないなぁと感じています。

とはいえ、モノを買いに行く対象ではないであろう、白川郷の今の時期の(雪が積もっている)幻想的な雰囲気を楽しんだりしているポストも多く見られることから、モノだけではない、ということもありそうです。 

 

古田さん:
うちの本社が沖縄にあることもあるんですけど、週に何便も数千人単位でクルーズ船でやって来るのを見ていることから、沖縄が熱いと感じています。僕たちのサービスは、コトとモノで言えばモノに近いんですが、データを見る限り、石川さんがおっしゃっていたようにそこまでモノ消費が減っているとは感じません。

モノにコトをセットして買い物しているという印象です。 

 

たとえば、外国人観光客が固まっているなぁと思うようなところにはなぜかドン・キホーテがある(笑)

「今、ドン・キホーテに来ているよ!」という体験とそこでの買い物、両方がセットになっているのではないでしょうかね。 

 

大坪さん:
なるほど。ありがとうございます。 

 

ちなみに、リクルートで言えば、ゼクシィというブライダル事業の中で『ゼクシィ遊愛(You I)』という、インバウンド旅行客に日本で前撮り体験をしていただくメディアがあるんですが、やはり一番人気は沖縄。

われわれ日本人が海外ウェディングにハワイを選ぶのと同じ感覚なのかなぁと言うイメージですね。そういった意味でも、前撮り体験を“コト”と捉えるなら、沖縄が熱いのかなぁと共感しました。 

 

古田さん:
あと、さっき生の最新データを見ていたら、和歌山も人気出ています。大坪さんが和歌山出身、ということで追加しておきます(笑)。 

 

大坪さん:
ありがとうございます。(笑) 

 

松本さん:
弊社の場合、企業側と集客戦略しているということもあるので、日本企業から見て、どこに集客をしようとしているか、という観点からお話しさせていただきます。これがやはり京都なんですが、地方自治体はもとより、サービスやクーポンを提供したいという小売店や百貨店が多いですね。とはいえ、予算の底がついてきているため、弊社のサービスを通じてユーザーにバリューを提供していきたいと考えているところが多いようです。 

 

夏にかけては北海道も増えていきそうなので、そこも注目できる地域かなぁと感じています。 

 

生データを扱っているからこそ気づいたこんなことやあんなこと

 

大坪さん:
次のテーマは「訪日観光客のデータ分析結果発表!」というものです。カスタマーデータをお持ちの企業として、訪日外国人の実際の行動データから、直近の発見や興味深い観点などの気づきを共有していただけないでしょうか。 

 

石川さん:
わたしたちがやっている四半期ごとのインバウンドレポートの2016年版を出し終わり、一年の総まとめがちょうどできたというナイスタイミングです(笑)。こちらのスライドは、データ解析を弊社で、まとめをRJCリサーチがしてくれています。 

 

解析しているTwitterやWebデータの量は1カ月に20万件ほど。順位、施設名、あとは数値が並んでいます。おもしろいなぁと思ったポイントはディズニーよりUSJのほう人気高かったこと。

しかも20%ぐらいの差があります。 

 

考えられる要素としては、ディズニーは世界中にあり、コンテンツもかぶっている部分がある。

でも、USJは日本のアニメコンテンツも入れていたりして、そこにしかないものが多かったりする。それがバイラルして、また人を呼び込んで……というサイクルがあるのではないかと思います。 

 

あと興味深いのは、1位〜50位まではコト消費、51位〜100位までがショッピングスポットなのでモノ消費というところ。

例えば北海道では白い恋人パークや、小樽オルゴール堂など、企業の担当者でも「なにこれ」と思うような、こういうところにも行っているのか!という気づきがありますよね。 

 

印象としてはコト消費っぽいところが増えたように思います。以前のようにモノを買いまくってシェアしまくってということより、コト消費に注目が集まったのかもしれませんし、そもそもコンビニなどで買った細かいものまでSNSにアップする人がいないということもあるでしょうし。 

 

「買いに行こう」より「体験しに行こう」というやり取りを旅行友だちとしているみたいですね。 

 

古田さん:
リアルタイムに上がってくる売れ筋商品データを見ている限りでは、これまでの家電爆買いは一段落し、ドラッグストアやドン・キホーテにあるような低単価の消費財の購入が増加しているという流れがあります。 

 

ありがちな化粧品や医薬品だけでなく、最近非常に伸びているのが洗濯用洗剤

これが意外とよくスキャンされています。 

 

ニキビケア製品も多いですね。

夏になると日焼け止めが増えてくるだろうなぁと前年度のデータから考えています。 

 

こういうランキングをメーカー側では把握しづらいので、活用していただければいいのになぁと思います。 

 

松本さん:
Trip Freeでは、飲食店やアクティビティの予約をしていただけるサービスを提供しているんですが、最近気づいたのが、短いタイムラインでアクションをしている、ということです。
どういうことかというと、ある程度、旅行先で行きたいところは決めてくるけど、ランチや夕食については日本に到着してから検索して決めているという感じ。これもインターネットが発展したからなんでしょうね。 

 

大坪さん:
Paykeさんだと、モノのデータを持っていらっしゃいますよね。

購入製品をどのタイミングで決めているように思われますか。よく耳にするのが「買い物リスト」を持ってきていて、あらかじめ決めてから来店するというものなのですが…。 

 

古田さん:
それは、半分は合っていますが、半分は違います。

「決め打ち買いもしている」というのが現実です。

訪日外国人旅行客が店に入ってきたときに、よく見てみると最初はすごい勢いで棚から買い物かごに入れていく。ひと段落したらじっくりその場で選ぶという行動パターンです。つまり、欲しいものをまず確保して、あとはお店で良さそうな商品を選んで、いわゆる衝動買いといったところでしょうか。その際、Paykeアプリでのスキャンというサービスが活きてくる、と(笑)。 

 

時間帯で言えば、夜中の12時から2時くらいが多いですね。日中は観光、そして荷物をホテルに置いてから買い物に繰り出すという動きをしているようです。 

 

大坪さん:
時間帯という軸で気づかれたことはありますか。 

 

石川さん:
日本人旅行客の場合、朝起きて午前中から動いて、ランチの時間帯にいったんピークを迎え、落ち着いたかなと思うとさら夕方にかけて上がっていき、20時から22時にはSNS投稿も減って行くという動きですが、外国人旅行客は少し下がっては上がり、少し下がっては上がり、と常に右肩上。

23時にピークを迎えていて、「日本人と外国人では(行動パターンが)違うなぁ」と感じましたね。 

 

大坪さん:
なるほど。昔、同僚から聞いた「日本人は昼間買い物をする。百貨店などは晩の早い時間に閉まる。でも、外国人は夜に買い物をする。開いているのはドン・キホーテだけ。だからドン・キホーテに外国人が買い物に来る」という話を思い出しました。 

 

インバウンドビジネスへの取り組みで意識していることとは?

 

大坪さん:
次のテーマは「“旅ナカ”領域でのビジネスのポイント」です。 

 

松本さん:
今、空港や宿泊先のホテルでSIMカードを提供していますが、利便性を考えると、その提供場所、タイミングを考えていくのがポイントかなぁと考えていきます。

できれば旅行に出る2日くらいまえに家に届いて、バッグに入れておけるようなオペレーションを組んでいきたい。また、誘導先コンテンツについても、今、瞬間的なニーズが高まっているのでいろいろな企業と組むことで応えていけるようにしたいと考えています。 

 

古田さん:
僕が考えているのは、「意識させずに使ってもらえるようにすること」です。

Paykeアプリ自体は旅マエでダウンロードしてもらっているんですが、アプリを立ち上げることって、旅先ではなかなかしんどい。訪日外国人がほぼ100%使っているものに、駅の改札ゲートだったり、飛行機のチケット発券機などがあるんですが、たとえば駅の改札を通る時に「これがJR」「あれはメトロ」といちいち名前を意識していないんですよね。

だけど使っているのはJRやメトロ。そのくらい名前を意識することなく使ってもらえるようになればいいなぁと考えています。 

 

そういうこともあり、ユーザーが個人でアプリをダウンロードしていなくても、小売店に導入されている端末で、その場で使ってもらえるような状況を作っているというのがありますね。 

 

石川さん:
意識していることというより、意識してほしいのは「データをきちんと見ましょう」ということ。 

 

というのも、日本人であればある程度この時期に人が移動するという予測はできますが、外国人旅行客の場合、異なる休日や為替の影響など、さまざまな要因で傾向が変わってくる。

直近3カ月では見えてこないことも、前年同月のデータを見ればわかる傾向がある。でも、そこまでのデータを取っていたり提供したりする会社が少なく、自社ログデータで賄おうとしてもそれは限界がある。

でも、SNS解析や通信キャリアからのデータを解析すれば、仮説の精度が上がる。外国人と一口に言ってもいろいろな国があるわけですし、トレンドも変わる。

そういう傾向をおさえて予測するのに僕たちのようなサービスを使ってもらえればと感じています。 

 

大坪さん:
ところで、古田さんからUXの話がでてきましたが、みなさん、どこの国のカスタマーに注力されていますか。 

 

松本さん:
弊社の場合、台湾と香港に注力しています。中国をマーケティング対象にしたいという話はあるんですが、インターネット環境が日本と異なっていて、面倒なところもありますので。 

 

古田さん:
うちの場合も香港、台湾、韓国がターゲットですね。

理由はマーケティングのコスパの良さなんです。確かに、中国からの旅行客が実質的に最も多く昨年で500万人、台湾の場合は400万人という数字なんですが、中国の人口は14億人。対する台湾は2300万人。マーケティング費用を中国にいくらかけたとしても、人口比3~4%なんですよね。

でも台湾の場合は17%という高比率でリーチできます。さらに、リピーターが多い。そう考えるとマーケティングしやすいです。 

 

なので、インバウンドビジネスをスタートさせるのであれば、まず台湾からの旅行客にアプローチしていくのがいいのではないでしょうか。 

 

石川さん:
メイン事業がB to Bなので、サブ的なアプリ事業という切り口でお話すると、FacebookやTwitterを使った広告を使っていて、香港や台湾以外に、意外とインストールしてくれているのがフィリピンなどの東南アジアの国。まだそれほど訪日されていないかもしれませんが、インストールしてくれているということは、日本に対して悪感情を抱いておらず、むしろもう少ししたら日本に行きたいと思ってくれている潜在的なターゲット層が多くいるんじゃないかと感じています。 

 

古田さん:
実際、ベトナム、インドネシア、フィリピンやマレーシアあたりからの旅行客が増えてきていますしね。Paykeアプリは東南アジア系の言語に対応していないし、広告も出していないのにわざわざ調べてダウンロードしてくれている。なので、2年ぐらいあととか、早ければ来年末あたりには東南アジア方面をターゲットにしたほうがいいのかなぁと感じています。あと、まだそういうノウハウやソリューション持っている会社がいないので、今から備えておけば、インバウンド領域で強くなれるのではないでしょうか。 

 

正確な情報で失敗を防ごう 

 

大坪さん:
次のテーマは「インバウンドビジネスの失敗談」です。

リアリティのある失敗談で共有していただけるものがあれば教えていただけますか。 

 

松本さん:
実はめちゃくちゃいっぱいあります。 

 

ひとつは勘違いから生まれたものですね。

僕たちはSIMカードを配布していますが、「これはきっと面倒であるに違いない」と考えて、会員登録やクレジットカード登録なしに配布してしまった。そしたら通信は使うけど、うちのサービスにはほとんど入ってくれない。 

 

そこで、会員登録をしてください、クレジットカード登録してください、と少しずつSIMカードへのハードルを上げていったんですが……、配布枚数は減りませんでした。ニーズがあれば使ってもらえるのに、「ユーザビリティーが悪くなるから」とこちらで勝手に決めつけてしまったのが失敗でしたね。 

もうひとつは商材の選択ミス。

創業当初、インバウンドの広告代理店みたいなことをやっていたんですが、リアルの購買にどのように結びつくのか、憶測ベースの話しかできていなかったんです。まあ、今ではTrip Freeという商品があるため、コンバージョンが計測でき、成果にもつながり、しかも国ごとのデータも取れるようになりましたけど、当時はうまくいきませんでしたね。 

 

古田さん:
うちの場合、マネタイズするのにB to BのBへの営業が重要になってくるんですけど、営業先で言われるのが「インバウンドって、もう終わったんでしょ」というもの。

メディアの「爆買い終了」報道を真に受けちゃっているんですよね。そのため、予算がつかないということが多くありました。 

 

でも、データを調べると終わっていない。むしろ伸びている。 

 

じゃあ、「あのグラフでの落ち込みかたはなにか」というと、日本円ベースか外貨ベースかの違いなんです。

日本円での消費額を為替のグラフと重ねてみると、見事に一致しているんです。 

 

たとえば、僕らが海外に旅行に行くときの予算プランの立てかたって「今回は10万円にしよう」「20万円にしよう」というものであって、決して「よし、2000ドル使おう」とはならない。

外国からの旅行客も同じで「日本で100元使おう」というふうに母国通貨で予算を立てているわけですよ。それをわれわれが勝手に日本円で追いかけてしまうから減っているように見えてしまうんですよね。20%くらい円高に振れましたからね。実際には外貨ベースで見ると訪日客の観光支出予算は増えているのに。 

 

そういうことを説明できなかったのが失敗談といえば失敗談です。この資料を作ってからは、「なるほど」と納得してもらえるようになりました。

なので、社内プレゼンで使えるので、インバウンド事業の担当者で欲しい人がいたら、こちら差し上げます(笑)。 

 

 

松本さん:
ぼくも「市場、下がっているけど大丈夫?」と聞かれることありましたけど、国別データで見ると大きく下がっているのは中国だけ。そのほかの国では変わっていないし、普通に市場としては大きくなっていくはずなので、ちゃんと論議したいなぁと思いますよね。 

 

石川さん:
弊社の場合は、インバウンドインサイトの導入先をきちんと絞っていなかった、というのが失敗のひとつですね。

サービスがバズって、多くの企業に登録していただいたんですが、実際には直接訪日外国人と対面している企業や、決済・広告・HP多言語化といったソリューションをしっかり作って持っている会社がターゲットになるべきだったんです。

絞らずにあちこちに提案してしまったため、アプローチの仕方が曖昧になってしまった、というところですね。 

 

また、企業の中で会ってくださる人の立場やミッションの違いを理解していなかった、という失敗もあります。

ただ単に話を聞くだけの調査段階だったりとか、決済権を持っていなかったりとか。

収益を上げるには、発注していただく必要があるわけですから、できるだけ「早い意思決定」をしてくれる人と会って商談を進めていかないといけないなぁと思いました。

とはいえ、外部から見ているとわかりづらいんですけどね…。 

 

2020年に向けて――そしてその先へ 

 

大坪さん:
では、最後のテーマ「2020年に向けて、どのようにアプローチしていくか」についてお聞きしていきたいと思います。 

 

石川さん:
2020年、という年に向けて国では4,000万人8兆円という試算を出しています。予算が組まれたり助成金が出たりすることもあり、企業側のマインドもそこに惹かれています。とはいえ、ほかの国の事例を見ると、オリンピックが終わったあとの観光流入減少という話は聞かない。むしろ、認知が増えて少しずつ観光客は増えていると感じています。 

 

もちろん、短期的にそこをターゲットにしながら動いたほうがメリットは高いのですが、意識せざるを得なくても、意識しすぎないで動いていきたいなぁと思っています。 

 

古田さん: 

そうですね。実は2020年とインバウンドの伸びにあまり関係性はありません。

実際には東京オリンピックが決まる前からインバウンド客は増え始めています。混同されやすいんですけど。とはいえ、国や企業の予算が今ついているので、そこをターゲットにビジネスをやっているというところはあります。あと、サービスも伸ばしていきたいですし。 

 

今、Paykeでスキャンして情報が表示されるのはドラッグ商品やコスメなどがメインなんですが、2020年までには日本中の商品に広げるというミッションを掲げています。もっとも、現状のペースでいけば2020年を待たずに終わりそうなので、そのころには海外でのんびりしていたいなぁという野望も抱いています(笑)。 

 

 

松本さん:
弊社としては、4,000万人のうちの10%400万人に利用していただきたいというのがひとつの目標になっています。

特にアジア方面のシェアを20%近くまで伸ばしていきたい。その先の話ですが、2020年のあともずっと伸び続けていくのではと思います。なので、2020年はあくまでも通過点のひとつとして考えていきたいですね。 

 

ここまで、インバウンドマーケティング領域の最先端で活躍されているお三方によるトークセッションをお届けしました。 

 

続いて行われた質疑応答では「売り場から人が減っているというメディアの報道で、閑散とした売り場の映像が流れるが、買う場所が変わったからなのか、それともほかの要素があるのか知りたい」という質問が飛び出し、それに対して古田さんから「あのデータは『日本百貨店協会』のもの。高級ブランド品を扱っているところからのデータであって、そういうものは数カ月ごとに買うようなものではない。つまり一巡したということのあらわれ。現在では使ったらなくなる“消費物”にシフトしている」と説明をいただきました。 

 

また、「予算の付き方」については「基本的に1年遅れでついてくる。メディアが盛り上がりを報道してからのタイムラグがある」という経験に基づいた回答もいただき、学びの多い機会となりました。 

 

インバウンドマーケティング勉強会――旅ナカ編(前編)はこうして幕を閉じましたが、いかがだったでしょうか。このレポートから気づきや発見を得ていただけていれば幸いです。 

 

次回は株式会社ワイヤ・アンド・ワイヤレスの喜地弘志さま、株式会社フリープラス 三田浩騎さま、株式会社PIJIN 松本恭輔さまをお迎えしての旅ナカ編後編。そちらもどうぞお楽しみに!