2017/04/09(日)15:00〜

PDCAを高速に効果的に回す者が、運用広告を制す!?Web広告の運用法セミナーを開催—甲斐 拓人さん MARKETERS CAMP TOKYO vol.5

スマホの普及によって、生活者の検索行動がより一層複雑化している世の中において、より効果的に、より効率的に、Web広告を運用するノウハウとは…?

4月9日に行われたMARKETERS CAMP TOKYOでは、Web広告の運用に焦点をあてて、そのノウハウの基礎から応用編までを学ぶセミナー&ワークショップを開催しました。

講師は、Webマーケティング活動を支援する株式会社セプテーニのシニアコミュニケーションプランナー、甲斐拓人さん。大型クライアントのマーケティングプラン作成に従事されている甲斐さんのノウハウを、たっぷりとお話しいただきました。本レポートでは、そのセミナーの内容をお伝えしていきます。

運用力は競争力!Web広告の運用法のイマ

現在、セプテーニグループの従業員数は1,300人ほど。セプテーニは、モバイル(スマホ)、ソーシャル(SNS)領域で強みを持っており、また、海外では16か所の拠点を展開し、ネット広告のクロスボーダー取引体制を構築しています。

強みとしているスマホ広告の売り上げ高は、ネットマーケティング事業全体の売上高の79%を占めているそうです。(2017年3月末時点)

予約型、運用型広告のメリット・デメリットとは?

まずは前提として、広告運用という言葉が非常に大きな言葉であるため、広告運用とは、広告代理事業で行うプランニングからオペレーション、振り返りまでを行い、その流れすべてのことを含めるものと定義した上で、今回、それら全てのノウハウを順にレクチャーしていただきました。

 

Web広告には、大きく分けて2つ。予約型と運用型の広告があります。まずは、1つ目の予約型の広告について、どんなものがあるのかを3つほど教えていただきました。

  • Yahoo!JAPANブランドパネル広告(Yahoo!JAPANのトップページ右枠に掲載できる広告枠。)
  • YouTubeマストヘッド広告(YouTubeのトップページに掲載できる広告枠。人気なので、なかなか出稿することのできない枠となっており、動画などのリッチな広告が多く見られる)
  • タイアップ企画広告(具体例として海外の某ファッションサイトと宝飾品ハイブランドがタイアップした企画をご紹介いただきました)

次に、2つ目の運用型の広告について教えていただきました。

  • リスティング広告(Web広告の基本。ユーザーが検索したキーワードから必要とする情報を推察して、関連性の高い情報をページ上部に表示させる広告枠。関連性の高い情報が出てくるので、非常に効果が高い)
  • アドネットワーク広告(ユーザーの性別、年齢、関心ごと、サイト訪問の有無などをもとにターゲティングして出稿できる広告枠)
  • Facebook広告(ユーザーが登録の際に記入した基本情報やいいね!している情報からターゲティングして出稿できる広告枠)
  • Instagram広告(Facebookのターゲティングを利用することができるので、精度の高い広告を出稿できる)
  • Twitter広告(ユーザーをWebサイトに誘導するだけではなく、アプリのインストールなどにも誘導できる)

運用型の広告では、それぞれのメディアによって広告のバナー表現が異なるということで、幾つかの事例を紹介していただきました。そのようなことから、広告を出稿する側は、出稿媒体が増えるたびに新たなクリエイティブをつくらなくてはいけないところが、大変でもあり楽しいところなのだと甲斐さんは言います。

 

そして、今盛り上がっているWeb広告の話題として、動画を挙げました。Web広告業界では、動画広告の出稿が増え、ユーザーへのリーチも増えているとのこと。

ある調査では、あるブランドの広告を見た人の中で、バナー広告、動画広告を分けると、バナー広告よりも動画広告を見たユーザーの方が11%ほどブランド認知率が高いとの結果が出ているそうです。

 

その他、FacebookやInstagram独特のカルーセル広告やキャンバス広告について紹介していただきました。また、Twitterにはカンバセーショナルカードという選択肢を出す形式のものがありますが、広告にも応用できるようになったことで、一方的な広告ではなく、ユーザーから何かしらリアクションを取ってもらえるようになり、双方向のコミュニケーションを生み出す場として盛り上がっているとのことです。

 

ここで、これまでにいくつかの例を出しながら説明してくださった予約型と運用型の広告の長所、短所をそれぞれ紹介していただきました。

 

予約型】

長所…広告配信期間や表示期間が保証されるため、確実に掲載できる

短所…広告掲載中はこちらで運用できないため、掲載後でないと次の手が打てない

【運用型】

長所…広告掲載中、いつでも管理画面から運用調整できるため、純広告と比較してリスクが少ない

短所…他の広告主と入札競争となるため、価格が高騰する場合がある

広告が無視される時代において大事なのは、顧客育成

ここからは、話題はいよいよ「Web広告の運用法のイマ」へ。私たちを取り巻くデジタル広告環境の変化について、お話しいただきました。

 

ここでのポイントは、2つ。

1つ目はタッチポイントとしてのスマホを無視できない時代になっていること。

2つ目はユーザーを育てる(ナーチャリング)という考え方があるということ。

このポイントを踏まえた上で、「Web広告運用のイマ」のお話をしていただきました。

 

これまでのプロモーションは、テレビ、ラジオ、雑誌、新聞がメインでした。

それが、どんどんインターネットに移行しているというのが、いまの世の中のトレンド。電通から毎年発表される、媒体別の広告費・広告制作費を推定した「日本の広告費(2016年)」によると、総広告費は6兆2,880億円となっており、その5分の1強、1兆3,100億円がWeb広告費。

それに比べて、テレビメディア広告費は1兆9,657億円となっている。しかしアメリカでは、2017年にとうとうWeb広告費がテレビメディアの広告費を超えるだろうとの予測も出ているとのこと。もちろん、日本もそうなる可能性はあるし、それだけWeb広告が広告の主流になってきているということです。

 

さらに言うと、10代20代にとってスマホは1stスクリーン。セプテーニでも、スマホ広告が主流になっているとのこと。この状況にともない、テレビメディアもどんどんオンライン化してきているのが現状なのだそう。

 

プロモーション自体に、スマホシフトが起こっているその理由とは?

そこに必ず人がいるから、と甲斐さんは言います。

移動中も、仕事中も、食事中も、就寝時も、24時間手の届くところにあるのが、スマホ。着眼点としては大事なところなので、きちんと理解しておいてほしいとのこと。そのような事情から、スマホを無視できない時代になっているということです。

いま、あらゆる市場の外部環境が変化しています。

たとえば、似たような商品やサービスが出回ることで、商品の価値が陳腐化してしまうコモディティ化、そして、少子高齢化によって、ターゲティング母数の減少と消費者の購買意欲が低下してきているとのこと。これらの現象から考えられるマーケティング課題は、情報があふれている世の中で、自分たちのサービスやブランドをきちんと認知してもらうために差別化を図り、かつ、様々な角度から長期的に戦略を行っていかなければならないということ。

 

ここで紹介してくださったのが、マーケティングの新技法を紹介した書籍『The Customer Journey』からの一節。

マーケティングファネルのうち早期段階において、企業と顧客の関係性を構築するために「魅力的なブランド体験」を提供することが重要である。

 

たとえば、男性が付き合っている女性にプロポーズをすることになったとします。

男性の場合、ジュエリー業界などにいる人でないと結婚指輪には詳しくないですよね。そういう人たちに対して、ひとつの例として「結婚指輪といえば◯◯(ブランド名)です」というイメージを早期に植えつけるとする。そうして、購入までそのイメージをずっと保っていけるかどうか。それが、ユーザーが他のブランドに浮気しないポイントであり、「◯◯の指輪をつけるとこんな風に輝くよ」「◯◯の指輪をつけた彼女は、友達からこんな風に言われるよ」などのアプローチも行い、あらゆる角度から情報を提供し続けることで、実際にユーザーが購入するところまで誘導する。

この手法が大切になってくるのだと『The Customer Journey』では述べられているということです。

電通が提唱する「AISAS」という考え方。

これは、認知(Attention)して、興味(Interest)を持ち、ネット上で検索(Search)して、購入または利用(Action)。その結果をSNSなどを通じて共有(Share)する。この一連の流れのモデルを「AISAS」と言いますが、最近では「AISAS」の後に継続利用(Repeat)という概念が追加されていて、シェアして終わるのではなく、そのユーザーにサービス利用や商品購入をリピートしてもらうことを意識しよう、と言われているとのこと。

なので、ユーザーの検討初期段階からアプローチしてブランドのファンになってもらうことが大切になってくるのだと甲斐さんは言います。

 

ここまでは、プランニングにおいて大事なことを説明していただき、顧客育成(ナーチャリング)していくことの大切さを教えていただきました。

 

しかし、いま、広告は無視される時代。広告をブロックするアプリまで出回っているほどで、“いかにも広告”なアプローチではユーザーは動かない時代です。そんな状況に対して、いかにユーザーにストレスを与えずにスムーズな行動を促すことができるかどうかが、ポイントになってきているとのこと。

 

そんな現状を踏まえて、今後マーケティングの主流になってくるであろう考え方を、2つご紹介いただきました。

①ユーザーの利用シーンを想定することでメディアを選択し、ユーザーとブランドの距離はユーザーによって違うので、個々に合わせたメッセージを伝える。この2つを掛け合わせてどんな表現を行うのか。

→そうすると、ユーザーにとっては有益な情報となる。

②ユーザーが知りたいことを踏まえた広告メッセージを伝えていくと、“いかにも広告”といった感じがなくなる。

→そうすると、ユーザーはサイトへ自然と移動し、購入に。そして、リピートへとつながる。

PDCAを高速に効果的に回す者が、運用広告を制す

ここからは、セミナーの後半に行うワークショップにも通ずる、広告運用を実際に行う上でのポイントのお話へ。

 

まず、普段から甲斐さんがクライアントにお話しをしている“「KGI」に対して「KSF」を仮説化して「KPI」をもとに最適化する”。これについて説明していただきました。ここにある3つのKから始まるワード、マーケティング業界にいる方なら普段から使われているという方も多いかもしれませんが、改めて噛み砕いて説明してくださいました。

 

「KGI」…プロモーションをなぜやるのか、という目的のこと

「KSF」…プロモーションをすることで目的を達成する、そのための鍵となるもののこと

「KPI」…どの指標をトラッキングしていくのかというもので、成果指標のこと

 

その他にも、プロモーションを行う上で覚えておきたいワードをさらにいくつか紹介していただきました。

【効率指標】

「CPA」…ユーザーが商品を購入するのにかかった広告コスト効率のこと

「CPI」…ユーザーがアプリなどをインストールするのにかかった広告コスト効率のこと

「CPR」…ユーザーがあるページに到達するまでにかかった広告コスト効率のこと

「CPC」…ユーザーがクリックするのにかかった広告コスト効率のこと

マニアックなところでいうと…

「CPD7」…7日間で計測した時に、かかった広告コスト効率のこと

「CPO」…新規ユーザーがクリックし、初回購入するまでの広告コスト効率のこと

 

【数値指標】

「Imp」…その広告がどれくらい露出したのか、表示回数のこと

「View」…その広告(主に動画)がどのくらい再生されたのかという指標のこと

「PV」…特定のページが見られた回数のこと

 

【継続指標】

「RR」…そのサイトやアプリをユーザーがどのくらいリピートしているか、継続回数のこと

「LTV」…ユーザーがそのアプリやサービスに対して生涯どのくらいお金を使ってくれているのかという指標のこと

「ROAS」…広告費をかけたことで、実際にどのくらいの売り上げがつくれたのかという割合のこと

 

実際に今後、広告代理店を通じて、もしくは自分たちでWeb広告を運用することになった時、上記のワードを使ってプランニングを行っていきます。そして、運用型の広告の場合は、いわゆるPDCAサイクルが日々の活動になっていくと甲斐さんは言います。

PDCAサイクルを回し続けることも重要で、これらをまとめると、“PDCAを高速に、効果的に回せる者が運用型広告を制す”とのことです。

振り返りを行って課題を見つけ、リプランニングしよう

ここからは、普段セプテーニで甲斐さんらがクライアントとどのように広告運用を行っていっているのかをイメージするため、ネットショップAというサイトを運営する実在しないクライアントをたとえにして、流れを説明していただきました。

 

ネットショップAの要望が、「月間1,000万円の予算でROAS500%を達成してほしい。平均客単価は10,000円ほど」というものだった時、はたして甲斐さんの考えるプランニングとは?

 

甲斐さんのプランニングの前提として運用上のKPIは、

予算:1,000万円

ROAS目標:500%=売り上げ5,000万円

平均客単価:10,000円

目標CV:5,000回=CPA2,000円

という計算を行い、それを達成できる見込みのある広告媒体をプランニングするというもの。

 

あまりCPCの高い媒体は利用できず、CVR(購入率)の高い媒体でないといけないということになります。そこで、リスティングを中心にリターゲティング広告を活用してCVRを上げていく方針が、甲斐さんのプランニング案でした。Yahoo! SearchやGoogle Searchなど全部で4つの媒体に対してどこにいくらの広告費をかけていき、それによって推測できる数値を割り出していきます。ここまでが、広告運用におけるプランニングのお話。

 

ここからは、実際にこのプランニングを実践する場合に必要な知識を共有していただきました。

運用型の広告を出稿する場合、入札を24時間365日、人の手で行うことは困難。そこで活用したいのが、「コンバージョンオプティマイズ機能」。これは、目標のCPA(ネットショップAのプランの場合は、2,000円)を媒体の管理画面に設定すると、その価格に合わせて配信先を質の高い顧客に絞って決めてくれる機能のこと。かなり精度が高く、媒体によっては、機械学習に基づいて毎日15分単位での調整を自動でしてくれる機能です。

また、通常のリターゲティング広告よりもさらにパーソナライズされた広告「ダイナミックリターゲティング広告」についても紹介していただきました。これは、商品数の多いサービスなどからするととても便利な広告手法で、広告コスト効率も高いのだそう。このような知識を踏まえた上で、広告活用のオペレーションを行います。

 

そして、ここからは広告運用の流れの中の最後の段階である、振り返りについて。

ここでは、実際にプランニング、オペレーションを行い、その結果のレポートをどのように見れば効率がいいのか、次の課題を見つけることができるのかというポイントを教えていただきました。

 

①プランニングで割り出した数字と、実際にはどこが異なっているのかを明らかにすること

②日々のちょっとした数値の変化に敏感になること

③統計学を用いた解析を行い、レポートからは見えない数値を考えること(発展編)

 

こうして振り返りを行い、課題を見つけたところで次の行動へと進めていきます。

このリプランニングは、広告マンにとってはとても大切なこと。

 

本質を見つけて、“計画→実行→確認→再計画”このサイクルをスピーディーに行っていきましょう!

そんなメッセージで、甲斐さんのセミナーは締めくくられました。

 

甲斐さん、本日はありがとうございました!